HCM通信 2026年2月号|人に関する経営判断を、整理する
判断が属人化する組織の共通点
◆なぜ判断はトップに集中するのか
多くの企業で、人に関する重要な判断(採用の最終可否、配置転換、昇格・降格、例外対応など)が社長や一部役員に集中しています。一見するとトップのリーダーシップが強い組織に見えますが、現場では「都度確認」が増え、意思決定のスピードが落ちやすくなります。
この状態は、経営者の能力や管理職の力量不足が原因とは限りません。多くの場合、判断に必要な前提(何を優先するのか/例外はどこまで許容するのか)が言語化されず、組織として共有されていないことが背景にあります。その結果、現場は「決めてよいのか分からない」状態になり、判断がトップへ集まっていきます。
◆判断を任せられない組織のサイン
判断を任せられない状態が続くと、現場が「考えない」状態になりやすく、判断の回数が増えていきます。判断の属人化は、本人の問題というより、組織の構造として起きていることが多いのです。
【簡易チェック】
□ 重要な人の判断が、特定の1〜2名に集中している
□ 現場が「確認待ち」で止まることが増えている
□ 判断の基準(何を重視するか)が部署間でズレている/言語化されていない
□ 例外対応が積み重なり、「その場しのぎ」になりやすい
複数当てはまる場合は、“判断の前提”と“任せ方”を整理することで、判断の渋滞は解消しやすくなります。
労務判断の質を上げる「事実整理」と記録
◆初動で9割決まる 事実を集める順番
労務のトラブル対応は、感情や印象で動きやすい領域です。しかし、後から否定されない判断をするためには「事実」を揃える順番が重要です。
まず押さえるべきは、いつ・どこで・誰が・何をしたか(時系列)です。次に、当事者と周囲(上司・同僚など)の話を分けて整理し、根拠は何か(メール、勤怠、面談メモ等)を押さえること。事実が揃うと、就業規則や社内ルールに照らした「判断」が初めて安定します。
◆記録は“監査用”ではなく「判断を守る盾
記録があると、後から「言った/言わない」になりにくく、社内外への説明も一貫します。これは会社を守るためだけでなく、現場管理職の判断を守り、判断のスピードを上げることにも繋がります。
社労士法人では、労務対応の初動で迷わないために、「時系列で整理する」「面談の要点を残す」「判断理由を事実と規程(ルール)に分けて説明できる形にする」など、事実整理・記録の残し方について個別の状況に沿ってアドバイスしています。必要に応じて株式会社HCMとも連携しながら、判断軸がぶれにくい進め方を一緒に検討します。
【簡易チェック】
□ トラブル発生時に「誰が何をしたか」を時系列で即日整理できている
□ 面談/指導の内容が議事メモとして残っている(日時・参加者・合意事項)
□ 判断理由を「事実」と「規程/ルールに基づく評価」に分けて説明できる
事実整理の型があると、判断のブレと“やり直し”が減ります。まずは簡易チェックで現状確認から始めることも可能です。
2月の税務と労務の手続期限[提出先・納付先]
【10日】
・源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
・雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
【16日】
・所得税の確定申告受付開始<3月15日まで>[税務署]
※なお、還付申告については2月14日以前でも受付可能。
【28日】
・じん肺健康管理実施状況報告の提出[労働基準監督署]
・健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
・外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>[公共職業安定所]
HCMよりひと言
判断がトップに集まっている状態は、誰か一人の能力の問題ではありません。多くは「何を優先するか(判断軸)」「どこまで任せるか(権限の線引き)」「どう説明できる形で残すか(根拠・記録)」が曖昧なまま運用が続き、確認や例外対応が積み上がって“判断の渋滞”が起きています。
属人化を個人の問題として矯正するのではなく、構造として整理し、現場で同じ基準で判断できる状態にしていくことが大切です。判断の回数を増やすのではなく、「迷う場面」を減らすことが目的です。
統合診断の簡易チェックでは、基準・権限・根拠のどこが詰まっているかを短時間で可視化し、優先して整えるポイントを整理します。ヒアリング内容は社内向けの資料化まで含めて伴走できますので、経営会議での共有にもつなげられます。今すぐ制度を変える必要はありません。まずは現状把握から、一緒に進めていければと思います。

